「天 味(てんみ)」という名....
美の源泉は自然であり、美味の源泉もまた自然である
美は自然界の至る所に存在するものであって人間が手を加えず
それをそのまま取り出せばよい
美は作るものではなく発見し取り出すものである
日本人が常に刺身を愛し、常食する所以は、自然の味、天然の味を
加工の味以上に尊重するからである
持ち味を殺すな。人工の調味料は数えても十種にもならないが
山海の幾千幾百種の食べ物は、その一つ一つが特有の味を持ち
しかもそれは、人為人工の企ての及ばぬ特色を有しているのである。
この天然の持ち味を軽視して、みだりに人為を施したりするが如きは
自然の味を冒瀆するものである。
「北大路魯山人」